クールビューティ 佐久間良子 天知茂ここにあり
1965年東映。監督はドキュメンタリータッチの作風を得意とした村山新治 。「巨大な富を築こうとする女が、男たちを利用しながらその野望を成し遂げていく。凄まじいまでに生きることの欲望をむき出しにした男と女の野望を描いたドラマ」(映連データベース)「女」(乾百子)を佐久間良子、野心家の実業家千種を天知茂が演じる。天知茂はこの役を1963年、1978年にドラマでも演じており、思い入れの強い役であったのだろう。(原作は五味川純平)
戦後のどさくさで家屋敷を叔父夫婦に奪われ一家で辛酸を舐めた百子は、上京しお針子から洋裁店のオーナー、デザイナーとしてのし上がっていく。目的は奪われた家屋敷を買い戻すため。お金がすべて。その過程でナイトクラブを複数経営する実業家千種と出会う。千種に開店資金の融資を「3ヶ月期限、担保は私の体」でお願いする。とは言え百子は女(体)を武器にせず、ビジネスで成功を掴もうともがき続け、結果的には上り詰め融資も返済することができた。仕事では成功を収めることができたが、千種がか弱い「女」として助けたくなる秘書(小林千登勢)や、若い男と心中する同僚(岩崎加根子)のような男にとって「都合がいい」古典的伝統的「女」に本当はなりたいのになり切れないもどかしさ、葛藤を抱えることとなる。
百子の従姉妹役を新人時代のまだ10代の大原麗子が真っ直ぐに演じているが、この娘は自分の気の赴くまま男遊びを繰り返してる。そこに葛藤はなくあっけらかんとしている。二人の対比、本質的ウエットとリアルドライ。
佐久間良子はそうしたウエットさを内包しつつも表面的には男も女もクールにあしらう女性を見事に演じる。しかし時として隠し通そうとしていたウエットな部分が滲み出ししまう瞬間もある。そうした移ろいゆく心の「乱れ」が巧みに表現されている。上昇志向が強く、駆け上ったと思った階段を一気に転落、そこに女性との色恋が絡む千種役はまさに天知茂にハマっていて、確かにこの人以外では演じ切れないであろう。ストーリーは多少まどろっこしい部分もあるが、それは千種と百子、二人に絡む三者三様の大人の男女の心情の揺れ動きのなせるものと理解した。(星4.0)

