私は選ばれし観客か?
モノクロ映画ばかり観てきたので、いきなりタイムスリップしてきた感じだ。
2025年東宝 監督 豊島圭介
「かつて一流商社の営業マンだった桐山(菊池風磨)は、友人に裏切られ、借金を抱え、以来、人と深い関わりを持たず、ビルの警備員として暮らしている。しかし、ビル内に事務所を構える、不思議な雰囲気の男・鈴木(大森元貴)の出現で、桐山の人生は再び動き出す。」(公式HP)今や飛ぶ鳥を落とす勢いの大人気バンドMrs. GREEN APPLEのヴォーカル大森元貴と、こちらも人気者トップアイドルのひとり、旧ジャニーズ系timeleszの菊池風磨のダブル主演。
まず、配役が絶妙だ。演者は主演の2人を含め、それぞれ演じて欲しいとオファーした俳優がしっかりキャスティングされている感じ。特に伊藤英明(美容室経営者)、桜井ユキ(「主婦」)、伊藤健太郎(桐山の友人)は印象深く爪痕を残す。子役たちも役にピッタリ合っている。菊池風磨はCMのお殿様くらいでしか演技らしい演技をこれまで観ていなかったが、状況に応じた演技の組み立てもちゃんとしていて、ちょっとびっくり。ほぼ演技初心者と思しき大森元貴は、普段のライブの延長の感覚で演じられたのではないか、と思えるほど自然だ。
ストーリーは、エピソードを積み重ねてしっかりホップ、ステップしていくが、最後のジャンプで綺麗に着地できたと見なすかは、観客の立ち位置によるかもしれない。「確証の弱い論拠に執着する大人」が少なくもと私には理解できなかったし、「悪いやつほどよく眠る」結果で終わったように見えるのも残念。ラストは丸投げでなく朧げでも良いので「動線」を引いておいて欲しかった、というのが実感。とは言え、古典的な小説や戯曲、落語でもそういう締め方はあるから、常道を逸している訳ではないが。
というか、そもそもそういう観かたをする映画では無いのかもしれない。本作のストーリーの柱になる「you tube」を日常的に観て育ち、気に入ったら「投げ銭」をし、「マッチングアプリ」で出会いを求める、本作や原作(結城真一郎作の小説)を支持する中心と言われる当代の10−20代には、全く別の視点で本作を、大きく言えば映画や映像作品というものを捉えているのかもしれない。「映画を見に行く」という身構え感はある世代以上のものか。あるいは若い世代は「報われない世の中」という現在の縮図と捉えるからこそ支持するのか。私の感受性はすでにオワコンと化した。
(星3.0)

