『白線秘密地帯』

映画 白線秘密地帯 日本映画

フィクションの「遊び」を堪能する石井輝男ワールドの嚆矢
水を得た魚の三原葉子

 アーティスト(芸術家)というよりもアルチザン(職人)でありたいと常日頃考えていたという石井輝男監督。本作は監督2年目の新東宝時代の初期作品。人間が演じ実在する組織が登場するのでリアルに映るが、内容としてはフィクション、小難しい思想を垂れる前にフィクションの世界の中で徹底的に遊んでやれ!という新人監督の職人魂が荒削りながら身を結ぶとは末恐ろしい。
 1958年新東宝 監督 石井輝男
「石井輝男監督による新東宝「地帯(ライン)」シリーズの第1弾。1950年代の売春防止法により地下に潜った非合法組織の実態をセミドキュメンタリータッチで活写する。」(U-NEXT HP)
 売春組織の元締めと女たち、それを取り締まる警察。構図としては当時東映で盛んに作られた「警視庁物語」のような刑事物の程だが、話の中心は売春祖機、特に女たち。
 登場人物は刑事、殺し屋、ソープ嬢、デート嬢とどちらも一癖二癖。端的に言えば汗と体臭が鼻をつく映画だ。
 三原葉子はとびきりの美人というわけではないが、その生命体としての逞しさ、脆さ、キュートさ、といった監督の求めるヒロイン像を体現できる稀有な存在であったのであろう。刑事役の宇津井健(めちゃくちゃガタイが良い)が相手役になるが、品行方正で坊ちゃん然としたこの時代の宇津井とは大人と子どものようで、どうも不釣り合い。相手役としてはシリーズ後半の吉田輝雄や天知茂の方がしっくりくる。ただこの映画での天地は陰影ある役だが妙に声が甲高く未完成な印象。
 競馬場での追跡、港湾のボタ山での格闘などスピード感溢れる土臭いアクションといった石井ワールドの定番が本作からも窺える。
 現在観られるのは56分の短縮バージョン。なのでテンポは良いが話がいきなり飛んでしまう場面が散見され、かなり強引な話運びに見えてしまうのは勿体無い。(大蔵貢社長は「切る」のが好きな人だったようで、これも社長による仕業?)
 組織の殺し屋として登場の菅原文太にとって本作は新東宝入社後映画初出演。出番は少ないが後半に少し見せ場あり、そつなくこなす。ただスターへの道のりはこれからまだまだ長い。
 エキゾチックな不気味さを醸し出す音楽(渡辺宙明)も本作を摩訶不思議な世界へ誘うひと推し。
(星3.5)
 

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