『​​さらば夏の光よ』

映画 さらば夏の光よ 日本映画
写真はイメージ

夭折の山根成之監督による青春映画の名作
実は繊細さん郷ひろみ×女ひとり大地を行く秋吉久美子
これが“若さ”というものか

 今では「さらば」と言えば「青春の光」になってしまったが、こちらはれっきとしたアイドル映画。 
 1976年松竹。監督は清新な作風で特に若者の細やかな心理表現に卓越した才能を輝かせた早世の山根成之(1936-1991)。主演は郷ひろみ。企画:周防郁雄とクレジットされるように、郷ひろみがジャニーズ事務所からバーニングプロに移籍した直後、それまでのアイドル路線から、大人の歌手への脱皮を目指していたタイミングであろうか。と言ってもこの時郷ひろみはまだ21歳だ。「親友同士が同じ女性を愛してしまったことから味わう苦い体験を描いた辛口の青春映画。遠藤周作の同名小説を、人気アイドルの郷ひろみ主演で映画化。演技に深みの増した郷ひろみもさることながら、秋吉久美子が二人の男性から愛されながらも、凛として生きる女性を演じている。」(松竹HP)
 南条(郷ひろみ)は表面的には粗暴でC調(懐かしい)だが自己表現が苦手で誤解されやすいタイプ。実は友人思いなのにそれが過ぎて空回りしてしまう。 生き別れの実父(仲谷昇)との初対面のときの緊張した面持ちや、さまざまなシーンで見せる表情など郷ひろみの演技は率直で伸びやか。 親友役の野呂を演じるのは川口厚。俳優川口浩の弟。黒縁厚底眼鏡の冴えない浪人生をステレオタイプなイメージに埋没することなくこちらも実直に演じる。まだあどけなさが残る美少年の面差しの郷ひろみとは対照的だがふたりとも熱量高い芝居だ。(しかし川口厚はこの映画の公開2年後に「芸能界大麻汚染」の時期に摘発に遭い逮捕、俳優業引退、とは一寸先は闇。)ふたりに愛される京子は秋吉久美子。「一億人の妹」キャラ全開の時代、ピンクのロングコートとカチューシャが映えるどこか儚いキュートさ。
 あらすじの詳細は割愛するが、この三人は結局どうなるのか、と気を揉ませる展開だ。南条は京子に気があるものの(京子も満更ではない)、親友野呂の京子への思いを知り身を引く。その後色々あって京子は野呂と婚約し妊娠。そして最後に京子は一人で生まれてくる赤ちゃんを育てる決断をする。(野呂は急死してしまった。)少々意外だが、 京子が南条に対して放つ言葉、「私たちは三人で一揃い、ピースが一つ欠けても関係は崩れてしまう。」大人だ。また「心を弄ばれた」というセリフにも観客は納得するだろう。南条にはそのつもりはないものの、京子の立場からすればそう思って当然。物語を着実に積み上げラストまで牽引していく脚本(ジェームス三木)は、原作の構成力の下支えもあるのかもしれないが、常に緊張感をともなった力作。
 ウエストコースト風BGMに乗って疾走する南条、京子との別れの場面でのバラード。音楽(大野雄二)も作品に大いに貢献している。爽やかでほろ苦い青春映画の佳作。(星4.0)

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