鬼才 石井輝男監督×主演高倉健による東映アクション映画の金字塔
石井輝男監督は東宝出身。新東宝に移って監督デビュー「地帯(ライン)シリーズ」で名を挙げ、新東宝倒産後東映へ移籍し、最初に撮ったのがこの作品。原作は当時の人気作家藤原審爾のハードボイルド小説。それまでの東映調の着流しにドスでなく、スーツに拳銃の「ギャング」をスタイリッシュに映像化した。今でも古びないのが不思議。
1961年東映 監督 石井輝男、主演 高倉健。
一番の見ものは、高倉健の若き日の姿。黒の細身のスーツがよく似合う。「宮本武蔵」の佐々木小次郎や「網走番外地」よりも前、少しコミカルなギャングを熱演するその姿はいわゆる「健さん像」は全くかけ離れたもの。ウィンクしたり、軽くコケたり、ヤニ下がったり。それも自然体でさらっと演じている。
ジャズ調の軽快なBGM(音楽:三保敬太郎。石井監督の音楽はどの映画でも映像にピシッとハマる)のもと石井監督の演出はテンポ良く展開はスピーディで無駄もなく、1時間20分余りはあっという間に駆け抜ける。
健さんの妻役は小宮光江。当時20代半ばにして鉄火場の姉御をクールに演じているが翌年自死されたそう。ギャング仲間の江原真二郎は後年の一家総出の歯磨きのCMやホームドラマの優しいお父さん像の片鱗も感じさせない、舌を舐め回すのが癖の爬虫類的な殺しても殺してもなかなか死なない?ネチっこい殺し屋を怪演。特に東映時代の役者としての振り幅の広さに感服。
健さんの母(清川虹子)や好色なボス(石井組の常連佐々木孝丸)など個性的な面々が揃うも、一人一人の登場人物の描写に深みがなく物足りなさを感じなくもないが、深淵の洞察などまどろっこしい、とスピード感優先で突っ走った潔さにより本作が成立したのも事実。そもそも石井監督は深読みさせたりすることを目指していないであろう。健さんの兄、鶴田浩二は本筋の関わりの割に結構あっけなく最後を遂げるが、石井監督、鶴田浩二が苦手だったようで。(脚本の佐治乾は鶴田浩二のお気に入り、監督は脚本が気に入らずかなり描き直したと証言している。この部分も手を入れたのか?)
これまで当たり役になかなか出会えなかった高倉健にとって、本作での石井輝男監督との邂逅は、この後の「網走番外地」にも繋がるまさに僥倖。日活とは一味違う、スタイリッシュだが土の香りがする“有”国籍(日本)東映アクションの誕生だ。
(星4.0)

