チャンバラ正統派 マキノ雅弘の意欲作
ある種衝撃! 遠山の金さんのミュージカル版、それも千恵蔵主演
混ぜるなキケン 良い子はマネしないでね
1951年東映 監督 マキノ雅弘・萩原遼
片岡千恵蔵扮する「遠山の金さん」を主人公とした「いれずみ判官」シリーズの一編。
金さんが東海道を逃げる女賊 紅燕のおりん(宮城千賀子)の追手となる道中もの。スタートからテンポよく話は進むが、箱根の関所を越えたところで、いきなりコーラスが入り歌謡映画というより芝居しながら歌うミュージカル調に。元祖歌う映画スター高田浩吉と松竹少女歌劇団出身の暁テル子の本格派が登場するとさらに加速。日本調からジャズ、ブギウギ、ルンバ、チャールストンと音楽は多彩。特に道中の旅籠の女中(戦前のスター歌手 美ち奴)と巾着切り(宝塚出身の朝雲照代)を交えたお互いの心情を吐露したカルテット(四重唱)は聴きもの。 オペラ「リゴレット」の四重唱を彷彿とは言い過ぎかもだが、その場でそれを聴いている芸者上がりの女中、飯田蝶子は往事に想いを馳せ感傷深げ、歌に合わせて舞っているような感じでちょっとほっこり。加えて後半、桂五郎というこぶしを効かせ浪曲風の歌をうたう不思議な少年歌手の登場でカオス状態に。宝塚出身の宮城千賀子が歌わないのは最後まで謎。また、千恵蔵と高田浩吉が同じシーンに映り込むことはあるが、ストーリー上で接点がないので言葉を交わすことが無いのも謎だ。すれ違いの可笑しみの演出か東映家の将軍?千恵蔵×外様高田の間には見えない壁が?
千恵蔵ももちろん歌わないのだが(残念)、その口跡の鮮やかさ、緩急自在な洒脱な演技は言うまでもなし。特にお白洲の場面の緊張感とその圧倒的な表現力、凄みに関しては、「金さん」俳優多かれど一目置かれて然るべし。
夜は暗く昼は明るい。当たり前だが、江戸時代は現在以上に夜の闇が暗かったはず。その明暗のコントラストを際立たせ、モノクロ映画にもかかわらず、観客に「色」を想像させるのはプロの仕事だ。(撮影 川崎新太郎・照明 中山治雄)
(星3.5)

