西村晃×渥美清×金子信雄・・アクの強いおじさんたちが夢の?狂宴
1964年東映 監督 佐藤肇
「グラマー女房の浮気に悩まされる小柄な亭主が、浮気の相手から500万円をユスリ奪ったことから続発する事件を、エロチックなムードで描いたコミック・スリラー篇。」(映連データベース)
原作は樹下太郎による30頁程度の短編推理小説。後年ドラマで活躍の松木ひろしと演劇畑の藤田伝による共同脚本は、いたってシンプルな原作に肉付けし、登場人物の職業も話が転がりやすいように「らしく」アレンジされ、エピソードも追加されエンターテイメント性をより高めた。
脇役の多かった西村晃が主演、親しみやすいキャラとはいえ美人女優全盛時代の異端児 春川ますみの妻等々キャスティングは一見地味だが、個性的な面々が揃った感。
気の小さい小柄な男が金の亡者となり豹変、嫉妬に狂い狂気(=凶器)と化すタクシードライバー西村晃はまさにうってつけの役で、常に狂気を孕んだ佇まいは後年、水戸黄門を演じている時ですら感じられたが(生来のポテンシャル?)、本作ではその緊張感が横溢し、終始何をしでかすかわからない感を抱かせる。
会社社長の曽我廼家明蝶は後年の 『神様のくれた赤ん坊』を彷彿させるthe艶福家でまさに適役。外科医の金子信雄は理詰めで攻めるその言葉と挙動はまさに演劇人(文学座出身)のもの。かつての二枚目の名残をとどめ山守親分と同じ人とは思いもよらぬ、さすが舞台俳優出身という演技で魅せる。霊柩車の運転手、渥美清は「裏渥美」全開だ。なんともいやらしい細い目でこれほど多くのものを語れるのか、と承服せざるを得ない。そのほか、浜村純、加藤嘉、小沢昭一といった濃い出汁の取れそうなアクの強いおじさんたちが一瞬かほんの数シーンの登場で爪痕を残していく。ここまでくるとまさにおじさん映画。新人の濃いイケメン岡崎二朗・ツンとしてかわいらしい宮園純子の若いカップルも霞みがち。
かように金の亡者と化した個性的な面々が入れ替わり立ち替わり登場しては消えていき、最後まで飽きさせない。(霊安室で「思わぬ出会い」があったりする「遊び」が楽しい。)
モノクロでかつ夜や暗闇のシーンが多く、画面は総じて暗めだが、闇に浮かぶ人影、口論する夫婦の居室の揺れる電灯、といった明暗のコントラストが非常に印象深い。(撮影:西川庄衛 / 照明:城田昌貞)
終盤、西村晃の所業を全て見ていた少年がいた。大人は子供の前で悪いことをしてはいけない、の教訓をわきまえない大人の終末で幕を閉じる。(星3.5)

