不世出のアイドル 浅田美代子大全集
ひろみもいいけどヒデキもね。1974年松竹。監督は「さらば夏の光よ」と同じく山根成之。この時期はアイドル主演作を多く手がけていた。主演は当時大人気の浅田美代子。「可愛いお手伝いの娘が、その底ぬけの天真欄漫さで明るくさわやかに生きていく姿を描く青春映画。」(松竹HP)ヒデキ=西城秀樹は、山梨から鎌倉の神山家のお手伝いとして上京してきた美世子(浅田美代子)が神山家で出会う出入りの同郷のクリーニング屋と、歌手西城秀樹の二役で出演。
1974年といえば、TBSテレビで「寺内貫太郎一家」が放映されていたが、そこでも浅田美代子はお手伝いさん役。おまけに西城秀樹は寺内家の長男として出演していた。他に篠ひろ子(当時篠ヒロコ)や左とん平もこの映画に出演。浅田美代子=お手伝い、のイメージはそれほど強かったのだろうし、確かにハマり役。田舎出のちょっと可愛い(美人ではない、のがミソ)お手伝いさんがしっくりくる。居そうでいない、まさに「隣の美代ちゃん」だ。
一言で表現するならば、本作はとにかく「浅田美代子」の魅力を堪能する映画、ということになろう。山根成之監督もそう腹を括った節がある。特に美世子のアップの多用が凄まじい。なぜかカメラ目線とか。表題曲もオープニングとエンディング(+鼻歌でも!随所で)で歌います。この頃は少し甘ったるい特徴的な節を付けたようなセリフ回しで、表情のバリエーションも結構あって余人にない独特の雰囲気に飲み込まれそうになる。人気の理由もよくわかる。観客の目当ては浅田美代子だろうし、+西城秀樹のファンも囲い込める訳で、企画者は強かだ。
ストーリーは、神山家の元刑事の吝嗇な頑固親父(山形勲)が反対する娘(篠ヒロコ)の結婚や、神山家の下宿人ジャネット(ジャネット八田。実はスリ)の更生?に美世子がいっちょかみするという内容。少々ご都合主義的な感じだが、美世子は曲がったことが大嫌いな直言居士。おかしいと思ったことは直球で物申すのだが、一瞬波風立つもののそのうちなんだが全てうまく丸く収まってしまう。あの表情、声で諭されたらしょうがないよね、と相手も(観客も)納得させてしまうある種魔術的な力を発しているのだ、恐らく。
本作のヒデキは少々抑え気味。同時期の「寺内貫太郎一家」で小林亜星と毎週格闘している姿とは雲泥の差。ラブロマンスなので当然と言えば同然。美世子と英雄(西城秀樹演じるクリーニング屋の青年)はお互い好き合うが、英雄は故郷に帰ることになり二人の淡い恋も終わりを迎える。最後に手を繋ぐことすら躊躇する初々しさ。爽やかな青春だ。(両者のファン対策と見るのが妥当か。)
頑固親父役の山形勲が、長台詞をものともしない演技巧者として芝居を支える。篠ひろ子はこの頃(20代のヒロコ時代に)すでに篠ひろ子として完成されている。すごい。喜劇役者の橋達也(山形勲の元部下の刑事)の少々没個性気味だがとぼけた味わい、クールなジャネット八田、と浅田・西城以外の演者にも見どころあり。一方で浅田美代子のそばには一連のドラマでの名コンビ悠木千帆(樹木希林)がしっくりくるもの確か。何か物足りないというのは欲張りすぎか。(星3.0)

