『天下の快男児 万年太郎』

映画 天下の快男児 万年太郎 日本映画
画像はイメージ

高倉健主演のコメディ! こういう健さんがもっと観たかった

 高倉健主演のサラリーマンもの、と聞くとその後の「健さん」のプロセス、着地点から考えると異形な感じだが、この時はまだギリ20代、青春の最後の一ページ、言い換えるとキャリア逡巡の時期を同時代の「ギャング」シリーズ(を並走させる東映さすが)とは違った趣向で。
 1960年東映 監督 小林恒夫
 「ヴィーナス化粧品本舗のサラリーマン・万年太郎が九州支社から東京本社へ転勤してくることに。社内は彼の噂で持ち切り。この中にあって、後輩の増田善吉は好奇心半分の若原若子と連れ立って万年太郎を東京駅に出迎える。若子は太郎を見るやファンになり…。」(U-next HP)万年太郎:高倉健、後輩増田:今井俊二、若子:山東昭子。
 正義感が強く、喧嘩がめっぽう強い万年太郎役を高倉健が伸び伸びと演じている。温泉でのぼせて白目むいたり、エレベータの中でいきなりキスしたり、あと5年(いや2年?)もすれば見られない役。本当は相手が悪くとも、自分にも非があると言い弁解しないから誤解され悪者扱いされる。万年太郎はそんなキャラクターだが、それが男らしいと言われた時代。スマートな東宝のサラリーマンものとは一線を画す。任侠映画時代の自己犠牲的「健さん像」にも綿々と続く造形と言えなくもない。この「太郎」シリーズはこの後数作続くので、一定の興行的評価=観客の支持は得られたのであろう。
 ヴィーナス化粧品の美容部員、身持ちの固い若子役のこの後国会議員になってしまった山東昭子はまさに適任。(父:中村是好、母:吉川満子だからかこの家庭は煎餅屋さんだけど「小津・大船松竹」ムード。突貫小僧みたいな中学生の弟もいる。)女子社員は小宮光江とか故里やよいとか、癖強いヴァンプ感漂う人多し。すごい会社だ。敵役の嫌味なボンボン上司、大村文武の小物感と子分感横溢した部下の潮健児ほかいつもの悪役達とのコンビネーションには絶妙な安定感。今井俊二は悪役「健二」になる前なので意外なキャラ、黒縁メガネの気弱な青年を好演。佐久間良子は行きつけの小料理屋のちょっとませた娘役だが、本編への関わりはあっさりで残念。元祖CMソングの女王楠トシエは、ストーカー気質の芸者役で大熱演。万年太郎にその気がないと知るとさっと身を引く潔さ。さすがプロ。
 小林監督はマッチカットを所々に程よく使用し(撮影:飯村雅彦)、シーンの展開は澱みない。(若子が施術する岡村文子のアップ→豚の画像→その日のランチの場面でとんかつ、にはしてやられた。)乱闘シーンのマンボのBGM(音楽:木下忠司)がコミカルでよく似合う。所詮カタギ同士の喧嘩だ、タマとる訳でなし。ヴィーナス化粧品のCMソングもしばらく頭から離れない。CMモデル役の久保菜穂子の肢体に刮目せよ。(星3.5)

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