『骨までしゃぶる』

映画 骨までしゃぶる 日本映画
画像はイメージ

昭和の東映版「レスキュー・オペラ」
お姫様ではない桜町弘子を救い出せるか?新人 夏八木勲

 いざ東映城に潜入。1966年 監督 加藤泰。
 「明治三十年代の廓を舞台に、何も知らずに売られてきた貧農の娘が、表面は華やかに見える廓の女たちがその裏で傷つきのた打ち回る姿に憐れみと悲しみを覚え、純情な桶職人との幸せを自分の手でつかみとろうとする物語。」(東映ビデオHP)
 まず、タイトルがすさまじい。(脚本:佐治乾。他の作品に「ゴキブリ部隊」で納得!)ちなみに「しゃぶる」のは楼主の方。強欲な楼主とその女房(口跡鮮やかな三島雅夫とおお懐かしや三原葉子姐さん)に「しゃぶ」られまいと、貧農出身の娘お絹(桜町弘子)は先輩の千代松(宮園純子)、お貞(久保菜穂子)らの知恵を借り奮闘する。仄暗い設定にもなりかねないが、お絹はいつもあっけらかんとしているから救われる。
 お絹に一目惚れした職人の甚五郎(これがデビューとなる夏八木勲)はかなり強引な方法でお絹を身請けする。そのプロセスの描き方はやや雑駁だが後味は爽快。
 話はいきなり飛ぶが、18世紀の後半から19世紀の初頭にかけて「レスキュー・オペラ(救出歌劇)」という形式のオペラが流行した。囚われの身のお姫様を勇敢な青年が敵を成敗して助け出すのがお決まりのパターン。まさに本作も東映城のお姫様ならぬ廓の女郎 桜町弘子を、怖いもの知らずの若者 夏八木勲が救出するレスキュー・オペラの図。(オペラ[opera]には「作品」の意味もあり。)「レスキューオペラ」の時代はヨーロッパ各地で王政が崩壊し、革命の兆しが見え始めた政情不安の時期。当時の日本は70年安保を経て過激派が先鋭化する直前の時期とは暗示的だ。
 本作デビューの夏八木勲は、そのぶっきらぼうで初々しい姿が朴訥で一途な役にピタッとハマった。武家の出とされるお貞を演じた久保菜穂子は出色。身を窶しても人間としての品格を持ち続けるが身も心も孤独な様を見事に演じる。渾身の演技。お絹役の桜町弘子は珍しい汚れ役。かつ東映京都の中にあっては珍しい女性の主役。うぶな田舎娘から廓の女に姿を変えるが、なりきれない「素の自分、譲れない自分」を残した造形は一種の自立した女性像を示す。
 夜の闇、光と影のコントラスト(撮影:わし尾元也)、小気味良い展開で、最後まで飽きさせない。(星3.5)

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